前の記事では、住民票・戸籍・登記の調査を終えたあとに案件が止まりやすい3つのパターンを整理しました。
止まっている原因の多くは、「誰と、どのルートで話を進めるか」という接触の部分にある。そして、その整理が次の判断につながる、という内容でした。
では、接触可能性の整理を進めた結果として、「それでも話し合いに進めない」という状況になったとき、次に何が検討されるのでしょうか。
その選択肢のひとつが、裁判所の手続きです。
この記事では、裁判所の手続きとはどのような制度で、どのような状況のときに検討されるのかを整理します。制度の内容を知ることで、「自分の案件が今どの段階にあるのか」を見極める材料のひとつとして使ってみてください。
裁判所の手続きとは何か
所有者不明土地の問題への対応として、民法上に定められた財産管理の制度があります。代表的なものとして、以下の2つがあります。
不在者財産管理制度
所在が不明な方(不在者)の財産を管理するため、家庭裁判所が財産管理人を選任する制度です。
「不在者」とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない方を指します。申立ては、利害関係人または検察官が行うことができます。
選任された財産管理人は、不在者の財産を保全・管理します。土地に関する交渉や処分が必要な場面では、管理人を通じた手続きが中心となります。
所有者不明土地管理制度
令和3年の民法改正により創設された制度です。所有者が不明な土地について、裁判所が所有者不明土地管理人を選任し、その土地の管理・処分を可能にする仕組みです。
不在者財産管理制度が「人」を起点にした制度であるのに対し、この制度は「土地」を起点にしている点が特徴です。特定の土地について申立てを行い、その土地に関する管理・処分が可能になります。
なお、登記名義人が亡くなっており相続人もいない、または相続人全員が相続放棄をしているといった場合には、相続財産清算人の選任が検討されることもあります。ただし、多くの実務場面で関係するのは上記2つの制度です。
どのような場合に検討されるのか
これらの制度が検討されるのは、一般的に次のような状況とされています。
所有者または相続人の所在が不明で、直接の連絡が取れない状態が続いている
登記簿・戸籍・住民票などの公的資料を確認し、一定の接触の確認を経ても、連絡手段が見当たらない状況がその前提になります。
土地の利用・管理・取得のために、法的な手続きを通じた対応が必要と判断された
境界確定の合意、土地の売買・取得、管理不全状態の対応など、話し合いを通じた解決が難しいと判断された場面で検討されることがあります。
申立ての要件を満たす状況が整っている
これらの制度を使うには、家庭裁判所への申立てが必要です。申立てには、申立ての趣旨・原因を示す資料や、不在者・所有者不明の状況を疎明する資料などが必要になります。
どのような状況が申立ての要件に当たるかは個別の事情によって異なるため、専門家への確認が判断の前提になります。
手続きを使う前提として整理が必要なこと
裁判所の手続きは、申立てをすれば自動的に進むものではありません。準備の段階でいくつかの確認が必要になります。
申立てに一定の準備が伴う
申立てに必要な書類の収集、申立ての趣旨・原因の整理、場合によっては管理人候補者の調整などが含まれることがあります。
こうした準備を専門家(弁護士など)に依頼して進める場合も少なくありません。
「他に適切な手段がないこと」が関係する場面がある
制度の性質上、「他に適切な手段がない状況であること」が申立ての前提として関係する場合があります。
そのため、いきなり申立てを行うのではなく、直接交渉の可能性や関係者との接触可能性を一定程度確認しておくことが、手続きを進めるうえでの前提として意味を持つことがあります。
関係者整理が、前段階として有効なことがある
登記名義人以外の関係者(相続人・共有者など)を整理することで、「手続きの申立てが必要かどうか」を判断する材料が揃いやすくなることがあります。
接触可能性の整理を先に行っておくことで、裁判所の手続きに進む段階かどうかの見極めがしやすくなることがあります。
このように、裁判所の手続きは一定の前提や準備を伴うため、その前段階での整理が結果に影響することもあります。
手続きは「段階のひとつ」として考える
裁判所の手続きは、所有者不明土地の問題に対応するための有効な選択肢のひとつです。
ただし、すべての案件が直ちにこの段階に入るわけではなく、前段階の整理によって状況が変わる可能性があるケースも少なくありません。
案件の状況によっては、関係者整理や接触可能性の確認という前段階を経ることで、手続きに進む前に話し合いが可能になる場合もあります。一方、その確認を経たうえで、やはり法的な手続きが必要と判断されることもあります。
大切なのは、「自分の案件が今どの段階にあるのか」を把握することです。
止まっている案件を前に進めるためには、どの段階にあるかを整理し、その段階に応じた手段を検討することが、判断の出発点になります。
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第3話
裁判所の手続きに進んだ場合、何が起きるのか
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