所有者の所在が公的資料から追えず、確定測量が止まっていた隣地案件——整理によって立会い経路が見えたケース

 

(都内某区・隣地の個人所有者からのご相談)

導入

隣地の確定測量を進めたいのに、相手方の土地が長く放置されていて、登記簿上の住所をたどっても所有者に行き着かない。こうした案件は、境界の話以前に「そもそも誰と立会いを取れば良いのか」の段階で止まります。今回取り上げるのは、都内某区で発生した隣地の確定測量案件で、相手方の土地には数十年にわたり放置された空き家が残り、公的資料上の追跡が途中で途切れていたため、測量そのものが動かせない状態になっていたケースです。

当時の状況

ご相談をいただいた方は、相手方の土地と接する隣地の個人所有者でした。ご自身の土地の利用計画を整理するうえで、境界を確定させておきたいという意向をお持ちでした。

一方、相手方の土地は50年近く実質的に使われていない状態で、建物だけが残っていました。登記簿の名義人欄に記載はあるものの、記載されている住所は既に現住所として機能しておらず、そこから住民票をたどろうとしても、過去の除票が廃棄済みで追跡が途絶える状況でした。相続が発生しているかどうかも、公的資料のみでは判定し切れないまま時間が経過していました。

関係者の整理としては、ご依頼者(隣地個人所有者)、相手方土地の名義人(所在確認ができていない状態)、およびその後発生しているかもしれない相続人——という並びになります。

なぜ止まっていたか

この案件が動かなくなっていた理由は、制度上の難しさというより、実務上の次のような詰まりによるものでした。

一つ目は、立会いを依頼する相手そのものが特定できていないことです。確定測量の立会いは、相手方土地の所有者または正当な権限を持つ相続人等に依頼する必要がありますが、その方にたどり着くまでの経路が、公的資料の時点で途切れていました。

二つ目は、「公的資料で追えない=止まる」という前提のまま放置されやすい構造があったことです。住民票の追跡が途絶えた時点で、財産管理人選任などの法的ルートに切り替えるか、案件自体を棚上げにするか、という二択に見えてしまい、その中間の整理が入っていない状態でした。

三つ目は、ご依頼者側に「境界だけでなく、状況によっては取得まで視野に入れたい」という意向が含まれていたことです。境界確定だけを前提に動くと、将来的な取得交渉の経路まで閉ざしてしまう可能性があり、手順の順序を先に整理する必要がありました。

どう整理したか

最初に行ったのは、案件を動かすことよりも、「今わかっていること/わかっていないこと」を切り分ける作業でした。

登記簿や住民票など公的資料でどこまで追えていて、どこで情報が途切れているのか。公的資料の外側に、相手方に関する非公的な手がかり(地域での記憶、過去に関わった方からの断片的な情報など)がどの程度残っているのか。ご依頼者の最終的な意向が「境界確定まで」で止まるのか、「その先の取得」まで含むのか。そして、取りうる選択肢ごとに前提条件や順序にどんな違いが出るのか。これらを一度分けて並べ直しました。

この整理の過程で、相手方が鹿児島県内の離島部に居住している可能性がある、という非公的な手がかりを確認できました。この段階では、本人と接触できていたわけではなく、あくまで所在確認の手がかりを整理できた、という状態です。

そのうえで、現地で手がかりの照合を行い、結果として、立会い同意に接続しうる経路が確認できる状態となり、後の境界確定(立会い確認)に接続できる状態になりました。

分岐と判断

この案件で検討対象となった方向性は、主に二つでした。

一つは、家庭裁判所に不在者財産管理人または相続財産清算人の選任を申し立て、その管理人との間で立会いを進めるルートです。所有者本人に到達できなくても境界確定の手続き自体は進められる一方で、取得や売却を前提にした合意形成には別の段取りが必要になり、期間・費用・ご依頼者の意向との整合を慎重に見る必要があります。

もう一つは、公的資料が途切れた先に残っている手がかりを整理し、本人または相続人への接触可能性を確認していくルートです。こちらは、境界確定と、その先の協議(取得や売却等)を同一の動線で扱える可能性が残るという特徴があります。

今回のご依頼者は、「境界を確定させたいが、状況によっては取得まで検討したい」という意向を持っておられました。この意向を前提に置いたとき、先に管理人選任ルートで走り出すと、後で取得交渉に接続し直す段取りが必要になり、手順として遠回りになる可能性がありました。そのため、まず接触可能性を整理するルートを試み、そこが成立しない場合に管理人選任ルートへ切り替える、という順序が自然だと判断しました。

これは「どちらのルートが優れているか」ではなく、ご依頼者の最終意向と整合させたときに、手順の順序として自然だった、という意味での判断です。

その結果どうなったか

整理の結果、次のような状態に到達しました。

相手方の所在確認の手がかりを現地で照合することができ、立会い同意を得られる経路が確認された。その経路をもとに、境界確定(立会い確認)に進める段取りが整った。ご依頼者側で、その先の協議——取得の検討や売買——まで進められる状況になった。

最終的に、ご依頼者側で売買に向けた協議に進める状態となり、止まっていた時間の長さがむしろ動き始めてからの選択肢の幅を広げる形にもつながりました。

まとめ

隣地が長く放置されていて、登記簿住所から先の追跡ができなくなっている案件は、制度上の限界というより、「何が止まっていて、何は動かせるのか」が未整理のまま時間だけが経っていることが少なくありません。

公的資料で追えなくても、非公的な手がかりや現地での照合によって、立会い同意の取得経路だけは確認できるケースは珍しくなく、またご依頼者の最終意向(境界確定までなのか、その先の取得まで含むのか)によって、取るべき手順の順序自体が変わってきます。

似たように止まっている案件でも、「なぜ止まっているのか」を一度分けて整理し直すことで、次の一手が見える状態に近づいていくことが多くあります。

所有者の所在確認が途切れている、境界確定が長く止まっている、相続人の範囲が見えない——こうした案件は、まず状況を整理するところから次の一手が見えてくることがあります。資料が揃っていない段階でも構いません。まずは状況整理からご相談ください。