相続未登記の共有地で売却が止まっていた案件——相続人が10名を超え、一部の所在が追えなかったケース

 

(個人の共有者からのご相談)

導入

相続登記が長く放置されたまま共有者が多数にのぼり、うち一部の所在が公的資料から追えない——こうした共有地は、売却や利用の話が動き出しても、権利関係の整理段階で止まることが多くあります。今回取り上げるのは、自身の土地に隣接する祖父名義の共有地を抱えた個人の方からのご相談で、相続人が10名を超え、その中の一部が戸籍上の追跡が途中で途切れていた案件です。

当時の状況

ご相談いただいたのは、ご自身名義の土地と、それに隣接する祖父名義の土地の双方を整理したいという個人の方でした。祖父名義の土地は、長期間にわたり相続登記がされないまま放置されている状態で、ご依頼者自身もその共有者の一人という位置づけでした。

関係者の並びとしては、ご依頼者を含む10名を超える相続人が共有持分を持つ形になっており、その中に戸籍上の追跡が途中で途切れてしまっている方が複数含まれていました。

ご依頼時点でのご依頼者の意向は、ご自身の土地と隣接する祖父名義地を一体として整理し、売却まで進めたい、というものでした。なお、ご相談の初期段階では、ご自身の持分のみを先に登記し、共有地部分はそのまま残しておく、という方向性も検討されている状況だったと伺っています。

なぜ止まっていたか

この案件で実務上詰まっていたのは、大きく次のような点でした。

一つ目は、共有者ごとに「どこまで追えていて、どの段階で追えなくなっているのか」が、全体としては整理されていなかったことです。戸籍の追跡状況が共有者ごとに分かれて管理されておらず、全体像が見えにくい状態でした。

二つ目は、一体での整理・売却を前提にすると、共有者全員の合意形成が必要になる一方で、一部共有者の所在確認ができていない段階では、合意形成の手順そのものを設計できない、という詰まりです。

三つ目は、「ご依頼者の持分のみを単独で整理するルート」と「共有地全体を一体で整理するルート」とでは、その後の売却や利用の幅がまったく異なってくる点です。どちらのルートで進めるかを決めるための判断材料が、まだ揃っていない状態でした。

どう整理したか

最初に行ったのは、「誰までが追えていて、誰から先が追えていないのか」を、共有者ごとに切り分けて整理する作業でした。

戸籍や住民票上の追跡がどこで途切れているか。他の共有者の方々が保持している記憶や、過去の家族関係の中に残っていた断片的な情報の中で、何が手がかりとして使えそうか。共有者ごとに、これらを一度並べ直しました。

この整理の過程で、所在確認ができていなかった方のうち一部について、「特定の地域に居住している可能性がある」という非公的な手がかりを確認できました。この段階では、まだ本人との接触ができていたわけではなく、所在確認の手がかりが整理できた、という状態です。

その手がかりをもとに、接触可能性を確認できる状態に向けて整理を進め、共有地全体の権利関係を扱える見通しが整っていきました。

分岐と判断

この案件で取りうる方向性は、主に二つでした。

一つは、ご依頼者の持分のみを先に整理し、共有地についてはそのまま残しておくルートです。短期的な手続きとしては完結させやすい一方で、共有地部分はその後も塩漬けのまま残り、隣接するご依頼者の土地単独でも、画地の形状や利用可能性の面で制約が残ることが想定されました。

もう一つは、共有地部分も含めて権利関係を整理し、一体で扱えるようにするルートです。共有者全員に関する整理を要するため労力は大きく、期間も読みにくくなりますが、ご依頼者の土地と共有地を一体として動かせるようになることで、その後の利用や売却の選択肢は広がります。

ご依頼者の最終的な意向が「一体での整理・売却」にあったため、後者の手順に沿って進める判断となりました。これは、どちらのルートが優れているかという話ではなく、ご依頼者の意向と整合させたときに、どの順序が自然かという意味での判断です。

その結果どうなったか

整理の結果、次の状態に到達しました。

共有者ごとの戸籍追跡状況が一覧として整理された。所在確認が途切れていた共有者のうち一部について、接触可能性を確認できる経路が整った。共有地全体の権利関係を扱える見通しが立った。

これにより、ご依頼者側で、ご自身の土地と共有地を一体として売却に向けた協議を進められる状態になりました。その後、対象地は建売住宅用地として利用される形となっています。

まとめ

相続登記が長期間放置された共有地で、共有者が10名を超え、一部の所在が公的資料から追えない——こうした案件は、関係者が多すぎて手を付けにくく見えても、止まっている理由を「誰の段階で、どの追跡が、どこまで進んでいるのか」という形に分けて整理することで、次に取りうる手順が見えてくることが少なくありません。

持分のみを単独で整理するのか、共有地全体を一体で整理するのかによって、その後の選択肢が大きく変わる点も、早い段階での整理が効いてくる部分です。

似たような条件で止まっている案件でも、最初に必要なのは「何がどこで止まっているのかを切り分ける」ことであるケースが多いと感じます。

共有者が多数いて進め方が見えない、相続登記が長く放置されていて手を付けにくい、共有者の一部の所在が追えない——こうした案件は、まず状況を整理するところから次の一手が見えてくることがあります。資料が揃っていない段階でも構いません。まずは状況整理からご相談ください。