離島部で取得した土地の境界確定測量が止まっていた案件——相手方所有者の所在確認が公的資料で途切れていたケース
(南西諸島の離島部・ペンションオーナーからのご相談)
導入
離島部で隣地を取得した後、境界確定測量を進める段階になって、相手方名義人の所在が公的資料の経路上では追えなくなっていることに気づく——こうした案件は、土地を取得したタイミングで初めて立会い相手の不在に直面するため、工程が前に進まないまま時間が経ちがちです。今回取り上げるのは、南西諸島の離島部でペンションを営む個人の方が、海沿いの土地を取得した後の境界確定測量で、相手方名義人の所在確認が途中で途切れていた案件です。
当時の状況
ご相談いただいたのは、離島部でペンションを営まれている個人の方でした。
実はこの案件には、一つ前段があります。ご依頼者は当初、海沿いに位置する隣地の取得を検討されている段階で、その土地の所有者に関する情報整理のご相談を一度お寄せくださっていました。ただし、その時点ではまだ売買も成立しておらず、ご依頼者と対象土地との間に直接の利害関係がなかったため、お受けできる案件ではないと判断し、一度ご相談をお断りする形になっていました。
その後、ご依頼者が実際に当該土地の取得を完了され、ご自身が所有者として境界確定測量に進まれる段階になって、改めてご相談をいただきました。今回は、取得した土地の確定測量を進めるにあたり、隣地所有者との立会いに向けた関係者整理の一部として、正式にお受けする形になっています。
関係者の並びとしては、ご依頼者(隣地を新たに取得した所有者)、相手方土地の名義人(離島部から同一県内の本土部へ転出された後、以降の所在確認が公的資料の経路上では途切れている状態)、および現地で境界確定測量を担当する地元の測量業者、という形でした。
なぜ止まっていたか
この案件で実務上詰まっていたのは、次のような点でした。
一つ目は、相手方名義人の所在確認が、公的資料の経路の途中で途切れていたことです。当初の住所から既に転出されており、以降の住民票をたどろうとした段階で除票が廃棄済みになっており、公的資料の経路ではそれ以上先に進めない状態になっていました。
二つ目は、「立会い相手に到達できない=境界確定測量そのものが進まない」という構造が、そのまま棚上げになっていた点です。地元の測量業者としては現地作業に入る段取り自体はあるものの、立会いを依頼する相手方が特定できない限り、工程の最初の段階で止まってしまう形でした。
三つ目は、ご依頼者にとっては、取得後の土地利用を具体化していく前段で、境界が定まっていない状態が長く残ることが、実務上の支障になっていたことです。
どう整理したか
最初に行ったのは、「公的資料の経路のうち、どこまでが追えていて、どの段階から先が追えなくなっているのか」を段階ごとに切り分ける作業でした。
登記簿上に記載されている住所、そこから取得できた住民票の状況、除票の保存状況、戸籍の附票の取得可能性、そして公的資料の外側に残っている非公的な手がかり——これらを順に並べ直し、どこまでが整っていて、どの段階から手がかりが乏しくなるのかを明確にしました。
公的資料の経路が途切れている以上、そこから先は残っている手がかりを一つずつ照合しながら、接触可能性を確認できる経路があるかを整理していく作業になります。この段階では、本人との接触ができていたわけではなく、所在確認のための手がかりを、可能な範囲で整理し照合している、という性質の作業でした。
その整理の過程で、相手方名義人が同一県内の本土部に居住されている可能性についての手がかりを確認でき、この情報をもとにご依頼者側で次の段取り——すなわち、地元の測量業者に引き継いで立会い依頼に進める経路——が整っていきました。
分岐と判断
この案件で取りうる方向性は、実務上、主に次のようなものでした。
一つは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、その管理人との間で境界確定の立会いを進めるルートです。所在確認が途切れた相手方が関わる境界確定では、形式的にはこのルートに乗せることが可能ですが、選任までに要する期間と費用、および「管理人との間で境界確定を進める」という手順になる点で、取得後の土地利用を具体化していきたいご依頼者の時間軸との間にズレが想定されました。
もう一つは、公的資料の外側に残っている手がかりを整理し、本人への接触可能性を確認していくルートです。こちらは、接続できれば、本人または相続人との直接の立会い同意に進める可能性があるため、境界確定測量本来の進め方に近い形で工程を組み直せる余地があります。
ご依頼者の意向が「取得した土地を実際に利用できる状態まで、時間をかけすぎずに境界確定まで進めたい」というものだったため、まず後者のルートで接触可能性の整理を先に試み、それが成立しない場合に管理人選任ルートへの切り替えを検討する、という順序で進める判断となりました。
これは、どちらのルートが優れているかという話ではなく、ご依頼者の意向と時間軸に照らしたときに、手順の順序としてどちらを先に試すのが自然かという意味での判断です。
その結果どうなったか
整理の結果、次の状態に到達しました。
公的資料の経路上でどこまでが追えていて、どこから先が追えないのかが、段階ごとに整理された。その先に残っていた非公的な手がかりを照合した結果、相手方名義人が同一県内の本土部に居住されている可能性について、接触可能性を確認できる経路が整った。ご依頼者側で、その情報を地元の測量業者に引き継ぎ、立会い依頼に向けた段取りを組める状態になりました。
その後の境界確定測量の実作業、および立会いの調整・結果については、ご依頼者側と地元の測量業者との間で進められています。
まとめ
離島部で土地を取得した後の境界確定測量で、相手方所有者が遠方へ転出しており公的資料の経路上では追えなくなっている——このような案件は、「追えない=止まる」というとらえ方のままで棚上げにされやすい領域です。
実際には、公的資料の経路上でどこまでが追えていて、どの段階から先が追えなくなっているのか、公的資料の外側に手がかりがどの程度残っているのか、そしてご依頼者の時間軸がどこにあるのか——これらを段階ごとに切り分けて整理し直すことで、管理人選任のルートに進むのか、接触可能性の確認を先に試みるのか、という判断の材料が揃っていきます。
似たような条件で止まっている案件でも、「止まっている地点」を分けて整理し直すことで、次に取りうる手順が見えてくることが多くあります。
隣地の境界確定測量で立会い相手の所在が追えない、転出先の住民票が廃棄されていて公的資料の経路上では前に進めない、管理人選任と接触可能性の確認のどちらを先に試すべきか判断がつかない——こうした案件は、まず状況を整理するところから次の一手が見えてくることがあります。資料が揃っていない段階でも構いません。まずは状況整理からご相談ください。